小学生のころ、教育実習生の先生が学級文庫に1冊の本を置いていってくれた。しばらくしてその本の存在に気がついた私は、ふとページを開いて驚いた。見開き3ページで1つの話が終わってしまったのである。その本が星新一の「盗賊会社」である。
この本に夢中になった私は、その後、小中高と「読書大会」や「読書感想文」など、「読書」が求められる場面では、必ず星新一を読んだ。ときには3ページの話を読んで、原稿用紙4枚分もの感想文を書かないといけないこともあったが、、、
しかし、便利なものを見つけてしまった。
それまで読書感想文は、まず初めに3日以上かけて本を読破しなければならなかった。しかし、これなら15分で読めるし、理解を深めようともう一度読み直したとしても30分だ。
振り返ると、いつも夏の終わりには星新一を読みながら「これで夏休みの宿題も何とかなりそうだ」と優越感に浸った記憶がある。そもそも貴重な夏休みの数日間を「分厚い本を読む作業」に費やすなんて馬鹿げている。
そして、今日は月末最後の日。実は今日中にブログを1記事更新しなくてはならないのだ。このブログには罰金制度というものがあり、1ヶ月に4記事更新しなければ、1記事につき千円の罰金になってしまうのである。そもそも副業収入だと言われて始めたブログに千円の罰金を支払っていては、元も子もない。
どうしたものか、とデスクに向かい適当にネットでネタを探すが、いたって平和だ。ヤフーニュースにも締め切りに迫られ苦心して書き上げたと思われる記事が並んでいる。
うーん。とため息を漏らしたとき、ふと本棚と目があった。
「盗賊会社 / 星新一」
これだ!これなら15分で読めるし、理解を深めようともう一度読み直したとしても30分だ!
うっすらホコリのかぶった本を取り出したとき、頭の中は懐かしい優越感でいっぱいだった。
「これでブログの更新も何とかなりそうだ。」